粉飾国家 (講談社現代新書)
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発売日: 2004-07-21
発売元: 講談社
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国を理解するためのヒント
書籍に付けられたタイトルに関心を抱いて、私は本書を手にした。
巷で騒がれている郵政民営化の是非論。その背後にあり真の改革の対象とされるべき国家会計・国債・財投債・特殊法人・民営化等の意義と構造。政治経済学の知識を持たない私にとって、TV・新聞等の情報だけではこれらをイメージすることは難しい。
「年金」という制度を題材として、上のいくつかのキーワードをどのように関連付けて捉えることが必要であるのか。理解を促し、少なくても1つの捉え方を示してくれていると感じる。
メディアでの氏の発言は時に恐ろしさを感じることがある。反感を覚えることすらある。本書の中でもそのような記述がところどころに見受けられる。反感や攻撃性を感じる部分は読み飛ばせば良い。
必要性を感じる部分、共感を持つことができる部分。これらを掴み取るだけでも、日本が抱えている問題点の数々を認識・整理することができ、今を思考する材料を与えてくれると私は感じた。
確かに新書の紙数制限からか、詳細までのすべてを論じることができないという氏の苦労もうかがえる。
本書は著名な論客の著書として手にするのではなく、純粋に1冊の「知識を与えてくれる新書」として目を通しておいても良いのではないかと感じさせられる。
読了後、本書のタイトルに氏がどのようなメッセージを託したのかを、私は今あらためて考えなければならないと感じる。
無責任体制下の年金制度
90年代の末に世間を騒がせた証券業界の不祥事は損失の隠蔽に関わるものだった。損失は「先送り」や「飛ばし」という常套手段によって隠蔽されていることが表沙汰になり四大証券の一角である山一証券が倒産に至った。同社のトップは損失の隠蔽が大蔵省の示唆によるものであったと主張したがもちろんお役人がそんなことを指示するはずはないということで彼らは罪に服した。このように損益の操作は「粉飾」とよばれて犯罪になる。したがって日本を「粉飾国家」と規定する本書のタイトルはきわめてセンセーショナルである。
その粉飾国家の最大の粉飾事例は言うまでもなく国民の年金制度である。そこで損失(基金不足)は未来の高度成長という一相場をあてにして「先送り」され、どこからも目の届かない日銀や特別会計や特殊法人というお膝元の子会社への「飛ばし」によって隠匿される。もちろんこんなことが永遠に続けられるわけはない。日本の年金制度は危機に瀕している。
問題の性質上実際の状況が部外者の目に見えないように仕組まれていることは理の当然だろう。著者は「何よりも、情報がセンサーとなるべき人々や機関に正しく伝えられ、それに基づいて市場や社会の仕組みが調節制御されてゆくフィードバック関係が至るところで寸断されていることに、閉塞の原因がある」と言う。それではどうすべきか。最終章「年金財政を政府から切り離せ」というのは正しいスローガンだと思われる。しかし著者の努力にもかかわらず新書版わずか20頁で委細を尽くした議論は望むべくもない。
恐怖をあおっているだけなのはどっちか?
金子教授のスタンスは、マスコミの国会議員年金未加入問題などのネガティブキャンペーンとバッシングに惑わされず、問題の本質を見ていこうというものだが、自身の本の内容も「年金の未積立金が480兆円(厚生年金430兆円+国民年金50兆円)もの規模に膨らんでいる」と人びとの恐怖心を煽っているだけのように思える。
どうして、こんなことになってしまったのか、ということに関しては、40%近い未加入・滞納者がいるというのと、年金積立金の運用が極めて不調だからだ。個人的には年金未加入・滞納者は許しがたいとは思うが、人びとはバカではないから、特に貰える額の少ない国民年金なんかは払いたくないという気持はわかる。
しかし、とにかく、年金については、専門家でもわからないことが多いというのが本当だったんだな、ということを確認できただけでも読んでよかった。民主党が年金改革法案を提出した際に、自民・公明両党が「具体的な数字が示されていないから無責任」だと批判したが「実際は、与党自身も計算できずに官僚たちに計算してもらっているだけであって、そういう批判をする資格はない」(p.37)というのはこの本の文章のなかで一番きまったところだ。
